LYE の League of Legends メモ

League of Legends プロリーグ LCS の解説を翻訳したり、同作や MOBA ジャンルで使われる英語を説明したりする予定。

NA LCS プレイオフ分析:Jatt's Stats CLG & IMT 翻訳

今週末のNA LCSプレイオフセミファイナルを前に、Jatt氏がCounter Logic Gaming (CLG) とImmortals (IMT) のチーム分析動画をアップ、これで前回僕が翻訳したTeam Solo Mid & Team Liquidと合わせて、試合の予習材料が揃いました…ので! 翻訳してみたいと思います。

前回のTSMとTLの分析については以下を参照ください。

lolnotes.hatenablog.jp

なお試合予定は

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となってます!ライブ視聴はしんどい時間ですが楽しんでいきましょう!

公式サイトYoutubeチャンネルなら録画を視聴できます。

 

では、以下よりJatt's Stats 翻訳です。


Counter Logic Gaming

スプリット開始前にMIDとADC選手を失ったCLG。しかし蓋を開けてみれば13勝5敗の2位でプレイオフ進出と好成績を残すことができた。Immortalsに唯一黒星をプレゼントしたチームでもある。

www.youtube.com

チームデータ

CLGは今回、非常にユニークなスタイルで試合を進めたため、2位のチームとしては少々変わった戦績を残してる。

  • CKPM (Combined Kills Per Minute、両チーム合計キル数/分) は0.65で6位、つまりキルやデスの少ない試合が多いことを示す。
  • K:D Ratio (Kill:Death Ratio、キルデス比) 1.2は3位タイ、AVG Gold Lead@15 (15分時点でのゴールド差) +806も3位と、ダントツで良いわけではない。
  • 最初のバロン確保率も50%で5位タイとあまり優れた成績ではない。
  • ただし最初のドラゴン確保率は78%で1位タイ、ドラゴン管理も70%で1位。これはマップ管理が非常に有効に機能していることを示している。Tempo*1が非常に的確で、それが相手に先んじて行動を起こせる原動力になっている。

メンバーのデータ

CLGは他のどのチームよりも1-3-1編成を使うことが多い。この時、ソロでプッシュするのはXmithie選手とDarshan選手の役割になることがほとんど。この戦略はメンバーの戦績データにも反映されている。

Stixxay

  • DPM (Damage Per Minute:一分あたりのダメージ量) が低い。Team DMG% (チーム全体における与ダメージ比率) も9位と低い。これは、CLGが (ADCが一番ダメージを叩き出す場面である) 集団戦をあまり行わないため。
  • 一方でAVG Gold Lead@10 (10分時点での平均ゴールド差) は+217で1位。これはもちろんレーン戦で勝利することが主要因であるものの、チームメイトがレーンスワップでタレット破壊時にゴールドをStixxay選手に譲る場合が多いことも要因のひとつ。

XMithie

  • CSPM (CS Per Minute、1分当たりのCS数) が4.5で1位。
  • これにより1-3-1編成でのプッシュが可能になっている。

Darshan

  • チームの核となる存在。
  • キル数 (49)、ダメージ/分 (404) の両方がTopレーン選手中2位。
  • AVG Gold Lead@10 (10分時点での平均ゴールド差) も2位。この数値は、CLGがいかに上手くレーンスワップを実行しているかを示す数字とも言える。

チャンピオン選択

 Darshan

  • キャリーチャンピオンをプレイすることが多かった。ただし現在のパッチ/メタではタンクの優先度が高くなっているため、CLGがどのようなピックをしていくかが非常に興味深い。

XSmithie

  • 多様なチャンピオンをプレイしている。
  • Team Liquid戦では彼がキンドレッドをピックするかどうかに注目。

Huhi

  • CLGが優位に進めた試合では、Huhi選手がアサシンか、他のレーンに対する強いプレッシャーを与えられるチャンピオンを選択していることが多い。これはCLGの戦略の核になっている部分でもある。彼が先述のようなチャンピオンを選択することで、1-3-1でプッシュする際の人数差を作り出しやすいようにしているためだ。

Stixxay

  • 最も多くピックしたチャンピオンはルシアンだが、一番良い成績を出しているのはエズリアル (4戦4勝)。

Aphromoo

  • 一番良い成績を残しているのはバード (5勝1敗)。彼はかなりの時間をバードの練習に費やしているので、その努力が実ったかたちになった。

 

こうして見てみると、CLGがどれだけ得意とするプレイスタイルに特化してきているかが分かる。セミファイナルにおいて、果たして彼らは得意スタイルを現在のメタに合わせて調整してくるのか、あるいは全く違うスタイルを作り上げてくるのか、注目だ。

 

 

 


Immortals

Huni選手とReignover選手をFnaticから、Pobelter選手をCounter Logic Gamingから、WildTurtle選手をTeam Solo Midから、Adrian選手をTeam Impulseから集めてきた、いわば寄せ集めのチームであった。通常こういったケースではチームとして機能させるまでに時間がかかることが多いが、Immortalsは初日から見事な連携を見せ、結果17勝1敗という目覚ましい活躍を見せた。

 

www.youtube.com

チームデータ

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NA LCS、EU LCS、LCK全体で1位の成績を残しているデータが5つある

  • 平均ゲーム時間 30:48
  • CKPM (Combined Kills Per Minute、両チーム合計キル数/分) 0.81
  • キルデス比 2.1
  • GSPD (Gold Spent Percentage Difference、消費ゴールド比率差) 18.7%、2位がTeam Liquidの5.4%なので、いかに圧倒的な試合が多かったかが分かる。
  • 最初のバロン確保率 78%

 

  • 最初のドラゴン確保率は61%でCloud 9とCounter Logic Gamingに続く3位。ただこれはImmortalsがTopレーンを重視していることを考慮するとしかたがないとも言える。また、単純にチームとして、試合序盤で1匹めのドラゴンを確保することを優先していないとも考えられる。

メンバーのデータ

Huni

  • 基本的に主要なデータはすべて1位。
  • 69キル
  • CSD@10 (CS Differential、10分時点での対面とのCS差) +13.1
  • CSPM (CS Per Minute、CS数/分) 7.9
  • DPM (Damage Per Minute:ダメージ量/) 610

Reignover

  • ただHun選手を語る上で外せないのが、リーグMVPに輝いたReignover選手の存在。
  • 相手ジャングラーに強烈なプレッシャーを与えながら、同時にファーミングでも先行する。
  • DPM (ダメージ/分) 371 はジャングラー1位。

WildTurtle

  • そしてReignover選手によるTopレーンへのプレッシャーから大きく恩恵を受けているのがWildTurtle選手。
  • キル数 104とDPM (ダメージ/分) 674 はADCで1位。
  • 一方で、CSD@10 (CS Differential、10分時点での対面とのCS差) は-0.6と、レーン戦ではあまり勝てていない (訳注: これはTSM時代から言われていることで今に限ったことではない)。しかし、彼が集団戦で大活躍する能力を持っていることは誰も否定できないところ。

チャンピオン選択

プレイオフで一番注目なのが、チャンピオン選択をどうするのかという点。レギュラーシーズンは圧倒的優位性から、Huni選手にキャリーチャンピオンを取らせ、Adrian選手に非近接攻撃サポート (ジャンナやソラカ)  を取らせるという自らの得意なスタイルでゴリ押しすることができた。

またReignover選手がキンドレッドをプレイしていないのも注目点。今回のプレイオフではかなり優先度の高いチャンピオンになるため、彼がキンドレッドをピックするかどうかは要注目。

またタンクメタになっている今、通常はキャリーチャンピオンをプレイするHuni選手が何をプレイするのかも気になるところ。

いずれにしても、試合用パッチで3週間の練習をしている彼らが、プレイオフでは何らかの新しいスタイルを出してくるのではないかと予想する。

 

 

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以上、日本サーバー LYE がお送りしました! ご意見などはこちらのコメント欄か twitter: @lye_ までよろしくです。あと、ワイワイ楽しむARAM部を立ち上げたいのでそちらに興味ある方もぜひ連絡ください!

 

 

 

*1:訳注:プロシーンにおける「Tempo:テンポ」は任意の戦略的行動を仕掛ける・実施するタイミングの妙を指す。たとえばレーンスワップでタワーを折るタイミング、ドラゴン前にレーンを押すタイミングなど

NA LCS プレイオフ分析:Jatt's Stats TSM & TL 翻訳

LCSはプレイオフも始まり、贔屓チームの応援にも力が入る時期になってきました。

それに合わせてLoL eSportsの公式チャンネルでは、Jatt氏 (アナリスト/キャスター) がシードの2チーム (IMT、CLG) を除く4チーム (TSM、C9、TL、NRG) の戦績データを分析する短い動画を公開。

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僕がうだうだしている間に試合が行われC9とNRGが敗退してしまったので、勝ち上がったTSMとTLの分析動画を聞き取って翻訳してみました。これで今週末からはバッチリ予習済みで観戦できますね!

しかしアナリストってこんな数字まで補足して見てるんだなーと興味深かったです。色んな略語が飛び交っていましたが、この記事で覚えて、ぜひ以後皆様ご活用ください(

 では、以下よりTSM、続いてTLの分析です。

Team Solo Mid

youtu.be

プレイデータ的にはTSMにとって過去最悪のスプリットになったのは間違いない。
スプリット前半は6勝3敗といい調子だったものの、後半は3勝6敗とまったく振るわなかった。
そしてプレイオフ出場チーム (上位チーム) との対戦が3勝7敗と全然振るってない。下位チームとの戦績は6勝2敗と悪くなかったが。

チームデータ

実に多くの分野において「そこそこ」の位置にいる。

  • チームのキルデス比は 0.89:1と非常に低い。
  • デス数も243と、8チーム中下から3番目。
  • CKPM (Combined Kills Per Minute、両チーム合計キル数/分) は0.74で3位、つまり、キルやデスが多数発生する試合が多い。
  • WPM (Ward Per Minute、ワード数/分) は0.6963位とこれについては比較的良い数値が出ているものの...
  • WKPM (Ward Kill Per Minute、ワード破壊数/分) は下から3番目と、ビジョン管理をし切れないでいる。

メンバーのデータ

Bjorgsen

悪い成績ではないものの、これまでの成績と比べると見劣りするのは確か。

  • CSD@10 (CS Differential、10分時点での対面とのCS差) は 8.6で首位なものの、他のデータについては大きく劣っている。
  • DPM (Damage Per Minute、ダメージ/分) は558で7位。
  • Teams Gold % (チーム内におけるゴールド獲得比率) も6位で振るわない。

Yellowstar

  • デス数が54でサポート最下位。
  • WKPM (Ward Kill Per Minute、ワード破壊数/分) も0.28で9位と、ビジョン管理もできていない。Fnatic時代にはデス数最小、WKPM最多だったことを考えると活躍できていないのが分かる。

Svenskeren

  • デス数が61でジャングラーとしては2番めに多い。
  • FB% (ファーストブラッド関与率) は11%と、スタメンジャングラーの中では最下位。
  • DPM (Damage Per Minute、ダメージ/分) は359で4位と、この点だけは振るっている。

チャンピオン選択

TSMは今季、あらゆるスタイルのチーム編成をこなすことを目指していたようだが、それはピックしたチャンピオンの数にも現れている。また数だけでなく、まったくスタイルの違うチャンピオンがピックされている点も注目。


Doublelift選手がピックしたチャンピオン数はNA ADCとしては一番多い。これが問題を端的に示しているように思う。いわゆる器用貧乏になっており、特別に得意とするスタイルがない。

このプレイオフでは、得意なスタイルを築き上げて、それを磨いていけるかが課題になると思う。それができなければ、LCS NA始まって以来初めて、TSMが決勝に出てこないという事態も起こりうる。

 


Team Liquid

youtu.be

スプリット前半は4勝5敗と低空飛行だったものの、後半は6勝3敗と盛り返してきた。
プレイオフ出場チームとの対戦は4勝6敗であるものの、このデータ、実は全体で見ると4位で、好成績とも言える。

チームデータ

4位が実に順当であるのが反映されたデータと言える。

  • 平均試合時間36.1分は4位。
  • Gold Lead @15 (15分時点でのゴールド差) も+357で4位。
  • デス数の少なさも190で4位。

一方で非常に優秀な成績を収めている分野もある。たとえば

  • チームのキルデス比は1.28:1で2位。
  • GSPD (Gold Spent Percentage Difference、消費ゴールド比率差) も5.4%で2位。このGSPDはゲーム終了時にチームが消費したゴールド合計額の差を示す指標で、これが高いということは試合が圧倒的な勝利であることを示す。この数字のランキングが実際の順位よりも高いということは、プレイオフに向けては良いデータであると言えると思う。

メンバーのデータ

Fenix

  • CSPM (CS Per Minute、1分当たりのCS数) は9.7という化物のような数字を叩き出している。この数字は北米、欧州、韓国、中国、台湾のMidレーナー全部ひっくるめてもトップというすさまじいもの。
  • もちろんそれには代償があるわけで、Kill Part. (キル関与率) が69.7%で8位、WKPM (Ward Kill Per Minute、ワード破壊数/分) も0.1で10位とあまり試合に絡めていない。

では誰が試合を動かしているかというと...

Dardoch

  • 今スプリットで最優秀ルーキーに輝いた。
  • キル数は54とジャングラー1位。
  • KP %(Kill Participation、キル関与率)も78%で1位。
  • Gold Lead @10 (10分時点でのゴールド差) も+289で2位。
  • 唯一低迷している成績がWPM (Ward Per Minute、ワード数/分) で9位。これは彼がサイトストーンをまず積まないこと、そして (緑ではなく) 赤/青スマイトを選択することが多いのが理由。

Lourlo
彼はよくTLの弱点のように見られる。

それはCSD@10 (CS Differential、10分時点での対面とのCS差) が-8.7で10位、Team DMG% (チームにおけるダメージ比率) は15.6%で9位という数字を見ればそうかもしれない。

ただ彼の存在を語るには、ここで一歩引いて全体像を見る必要がある。タンクをプレイすることが非常に多いことを考えると、実は彼はチームをうまく補佐し推進するという目的を果たしている。

アシスト数132は北米TOP 1位だし、前半でCS差をつけられ、なおかつ多くの戦闘で矢面に立つにもかからわずデス数が43で5位というのは良成績だ。

 

チャンピオン選択

Lourlo

  • タンクをメインにプレイしているのが見て取れる。
  • クインとルル以外全部タンク。

Fenix

  • プレイしたチャンピオン数12はNA LCS最多。

Piglet

  • 多様なチャンピオンをプレイしているものの、メインはルシアン。

Matt

  • アリスターを6度ピックしているものの、実はその際の戦績は1勝5敗と大きく負け越している。

全体的には、Lourlo選手がポッピーまたはノーチラスをピックし、Matt選手がジャナ/バード/スレッシュ/モルガナのような非近接攻撃チャンピオンを選択した時に一番よい結果が出ている。
結論をいうと、TLのデータは4位のチームとしては非常に良いといえる。特に、途中まで6位のチームだったことを考えると素晴らしいとすら言える。

 

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Game Developers Conference 2016でLCSトップの講演などを聞いてきました

米国サンフランシスコにて毎年開催される世界最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス、Game Developers Conferenceにお仕事で行ってきました(役得!)。

いくつかeSports関連の講演にも出させていただき、そのうちのひとつがファミ通.comさんで記事になっているので紹介します!

 

www.famitsu.com

講演の中身については上記記事を見ていただくとして、ここでは全体的に印象に残ったことをつらつら書いてみたいと思います。

「物語=Story」が重要

eSports関連のセッションはLeague Of Legends以外にもいくつかありましたが、多くのセッションで皆が口をそろえて言っていたのが「物語」をどのように提供するか、ということ。

従来のスポーツでも、ライバル関係にある選手の対戦などファンが感情的な結びつきを持てる情報があり、そこにさらにハイレベルなプレイがあって皆が熱狂するスポーツになるという意味の内容が、各講演者の口から少しずつ違う表現で語られていたのが非常に印象的でした。

従来のスポーツとの違い

これについては、選手が自分たちに近い感じがする、という意味合いの話をしていた人が複数。会いにいけるアイドル的なことなんだろうか。以下、いろんなセッションの記録メモから引用

従来のスポーツファンには怒られてしまいそうだけど、eSportsの選手のほうが人間臭い感じがあるよね。プレスの対応トレーニングを受けていないのも手伝って、身近な存在として感じられる。

eSports選手って10代とか20代前半で、人生のすべてを賭けてゲームに打ち込んでて、そこには人間的な物語がある。それが魅力だと思うんだ。

たとえばDoubleLift選手がCounter Logic Gamingに所属していた時、ひどい負け方をしたことがあったんだけど、その直後にTwitter上でフォローをほぼ全員解除して、チームメイトだけをフォローし直したことがあった。インタビューではそういうことには触れられなかったけど、彼のその時の心情が、その行動からでも伝わってくるじゃない。

 続いて、ファン同士の交流のかたちが違うという話も。

Twitchのコメント欄とか、Twitterとか、受け身で見るだけでなく「自身も参加する観戦」というのが従来のスポーツよりも当たり前に行われているように感じる、とのこと。

これからeSports関連の仕事につきたい人へのアドバイス

複数の講演の質疑応答で、これから業界に入りたい人へのアドバイスを、という話が上がっていました。以下、箇条書きで今プロとして活動している人からのアドバイスを。

  • 誰かの真似をしないで。自分の得意な、自分だけの「ニッチ」を見つけて。

  • コンテンツクリエイターとしては、「現実を伝える」仕事なわけだけど、一方で「フィクションの物語作法」を理解しておくことも大事。逆説的だけど。受け手が飲み込みやすい物語を構成できるようになるわけだから。

  •  

    SNSなどのコメントを真摯に受け入れる一方で、ネガティブな意見に振り回されないようにして、とにかく手を動かすことが大事。

  • 出来る限り、eSportsの活動に参加し、自分が情熱を燃やしている対象に時間を費やすこと。大会運営、ストリーミング、解説、いろんな仕事があるけれど、eSportsはこれからも広がっていくから、また新たな職種も生まれてくる。だから、自分の情熱が結実するよう、できるかぎり色んな活動に頭を突っ込んでいくべき。

 

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とまあこんな感じで盛りだくさんの内容でした。

今の形はまだ進化の過程というのは全員の共通認識だったので、これからもより良いものになり、情熱を持った人がごはんを食べていける業界になったらいいなーと思いましたまる。

Deficio 氏 & Krepo 氏、コーチの歴史と重要性について語る

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先週の LCS は「Coaches Week」ということで、プロチームのコーチが解説デスクに呼ばれて話をしたりしていましたが、公式の Youtube チャンネルでは僕の好きな解説者 Martin "Deficio" Lynge氏と Mitch "Krepo" Voorspoels 氏がプロシーンにおける「コーチの進化」について語る短い動画が上がってました。ソイツが面白かった (し、先週の Scarra 氏のお話ともつながる) ので、今週はそれを聞き取り翻訳してみました。それでは、以下より翻訳です。

 

 

Krepo Season 2 の頃は基本的にコーチっていなかったよ。全部プレイヤー自身がやってた。


Deficio あの頃はプレイヤーの「エゴ」がすごく大きくて。大物プレイヤーがいて、そこに新メンバーが入ってきて、ゲームについて議論しても議論にならなかったんだよね。大物プレイヤーの言うとおりにするのがそこのやり方、ってなってたから。

 

Krepo あの頃は言い争いになっても解決手段がなかった。プレイヤー全員が議論の当事者だったんだからそりゃそうだよね。中立の視点でチームを見る人がいなかった。そのせいで、結構なチームが空中分解してしまったと思う。そして分解しなかった一部のチームは良いチームになってた。Season 3 の始めくらいになっても、まだコーチってほぼ存在しなかった。当時は必要をあまり感じなかったんだね。求められていたのはゲームプレイに関するコーチで、チャレンジャーチームのメンバーがコーチとして認めるようなゲーム考察力やテクニックの理解度を持つ人材がまず存在しなかったから。

 

Deficio ただ Season 3 になると Riot と色んな書類を交わす必要が出てきた。自分はそんな面倒な事やりたくなかったし、それは Bjergsen も Krepo も同じだった。そこでマネージャーを探そうって事になったんだ。書類仕事をやってくれて、フライトの手配とかそういうこともやってくれる人をね。特に Season 3 の最初のスプリットくらいの時期には、ゲーミングハウスのないチームも多かったしね。そうしてマネージャーが入ってからしばらくすると、マネージャーが「なんとなく全体像が掴めてきたんだけど、君たち練習試合の後いつも言い争いをしてるよね。ああいう時は 5 分くらい休憩を取って、その後リプレイを見てみたらどうかな? 怒鳴り合うんじゃなくてさ」って言って。それが Copenhagen Wolves では上手くいったんだ。そこで、「こういう人、フルタイムで居てもらったらすごくいいんじゃないか」って話になった。

 

Krepo チームがゲーミングハウスを持つようになったのって、だいたい Season 3 の初期からサマースプリットの終わりにかけてだったと思うんだけど、当時はその場しのぎ的な処置だった。アレで結構問題起きたんだよね。5 人の選手をそれぞれに管理するよりも、一箇所に集まって毎日顔合わせようって考えだったんだけど、身の回りの世話は全部自分たちでやるし、適切な監督者もいなかった。あの時期に、アナリストやコーチが必要だってことが分かった気がする。あと、ゲーミングハウスみたいに外部からの影響を遮断した環境だと、運動習慣や食事がひどいことになりがちだったね。

 

Deficio 5 人がひとつ屋根の下で暮らしてて、練習試合で負けたりすると、雰囲気最悪だったんだよね。みんなイライラして、話にまとまりもなくなる。そんな時、外部から「ちょっと落ち着いて、君ら見当違いのことで揉めてるよ、君らが負けたポイントはこことあそこだよ、特にあの Baron コールはまずかった」って言われればよかったのかもしれないけど、現実は「あの Pick & Ban はないわ」「お前のせいだろ」「いやお前が...」「てかレーン戦でキル取られてるし」とかってなって、結局「もういいや次の試合しようや」ってなってしまってた。それじゃ進歩しようがないよね。練習試合のために練習試合しているようなものだから。このサイクルにハマって、ずっと同じこと繰り返してるだけで上達しなかったチームは多かったと思う。「このやり方は間違ってるよ」って言ってくれる人がいなかったんだ。

 

Krepo そういう時期に、過去名プレイヤーとして活躍した人、つまりゲームについて深い理解がある人、が一部のチームに力を貸すようになってきた。


Deficio Moscow Five は、きちんとしたマネージャーを置いて管理を始めたチームの先駆けだったと思う。あれが後にコーチになるポジションの原型みたいになってると思う。

 

Krepo 彼はマネージャーとしてきちんと敬意を集めてたよね。彼が Moscow Five を率いているんだ、って感じで。

 

Deficio アナリストを最初に入れたのは Lemondogs だったかな。2 人いたんだけど 1 人は名前が思い出せないや。もう 1 人が Clement Chu 氏で、話をしてスグに来てもらうことにした。で、彼は着任してすぐにレポートを用意してくれたんだ。「こっちが LPL のデータ。こっちが LCK の Pick & Ban。君らの Pick & Ban は酷い。韓国の Pick レートはこうなってて、理由はこう。」選手側は動画を見る必要もなくって、ただ彼がまとめたメモを見ればよかった。で、それを読んで「ああ、自分らずいぶんたくさん間違いを犯してるわ」って気づいたんだ。視野狭窄を起こしてて、2、3 のチャンピオンをピックすることにこだわってた。そこからだね。他の人にもそのレポートを見せたりして、アナリストの評価が上がったと思う。

 

Krepo あれは転機だったよね。一緒にリプレイを見てて「ほらココ、なんで○○しなかったの? これこれこういう理由で、こうすることもできただろうに」って言ってくれるとか。そこで、ああそうか、って実例を伴って理解が進む瞬間があったりとか。

 

Deficio Kiedyś Miałem Team のコーチで数々の名選手を育てた Veggie 氏はすごく頭の切れるコーチだったと思う。彼は「韓国でやってることは、自分たちも試してみるべき」っていうアプローチを最初に試したコーチだった。その手法は Season 4 くらいで他の多くのチームも採用したっけ。彼は韓国で起きてることを分析して、選手にリプレイを見せたりしてくれて、その成果はすぐに現れた。そうすると他のチームも、「ウチもああいう人欲しい」ってなっていった。そうして、チームにコーチを置くことが普通になっていったんだ。

 

Krepo 長年独力でやってきたプレイヤーにはなかなか受け入れがたいところもあるとは思うけど、コーチはチームの選手にとって有益なんだよね。どう有益か? はチームごとに異なるとは思うけれど。ただ「サポートチーム」は「選手」にとって有益でなくちゃいけないよね。

 

Deficio Diamondprox みたいな歴戦の名選手でも、今やコーチの重要性を認めてるよね。

 

Krepo 時間はかかったみたいだけどね。

 

Deficio うん、時間はかかった。でもコーチの Sean はもともと名ジャングラーで同じロールをプレイしていたから、学べることも多かったんじゃないかな。そんなわけでベテランプレイヤーでも価値を認めてきているから、新しいプレイヤーは「コーチとか無意味だよ」とはもう言えないよね。だって他の全員が、「コーチは有益」だって思ってるんだから。

 

Deficio おそらくコーチ関連の次の進化は、Esports の外から人材を引き入れることから始まると思う。そういう人材はゲームプレイについてチームに付加価値を与えることはできないけど、他にアナリストを置いてそれに対応するようになるんじゃないかな。スポーツのマネージメントやコーチングの技術があり、なおかつ League Of Legends のゲーム理解も完ぺきな人材はいないし。

 

Krepo バランスの問題にはなるよね。LoL プレイヤーとしての知識と、従来のスポーツに関する知識の。そういう人が 1 人いればいいけど、チームで実現することも可能だから。

 

Deficio コーチの仕事はゲーム内容について指示を出せること以上のものなんだよね。チームメイトとしてどう行動するのか? フィードバックの出し方、受け取り方。日々を正しく暮らす方法。だからマネージャーが必要で、コーチが必要で、チーフアナリストが必要で、ってなっていく。League Of Legends はとても底の深いゲームだから。フリーランス含め、複数のアナリストに情報をまとめてもらって、コーチがそれをフィルタリングして、選手に渡す。そういう構造ができることで、優れた情報が選手のもとに入ってくるようになるんだ。

 

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Scarra 氏、LoL プロシーン昔と今、未来を語る (League Community Podcast)

Riot Games 公式 Podcast で 元プロ選手の Scarra 氏が元チームメイトの Jatt 氏(Teamfight Breakdown の解説などでもお馴染み)と一緒に過去を振り返るエピソードがあり、個人的にとても興味深かったので、適当につまみ食い翻訳しました。どぞ。

間違いの指摘などはこちらのコメント欄か@lye_ までよろしくです。

 

ゲスト概要:

Scarra (William Li )

テキサス州ヒューストンで生まれ育った中国系アメリカ人。両親は中国出身。
WoW にハマった後、Heroes of Newerth で MOBA に触れる。League Of Legends は兄に誘われて、ベータ時代(シーズン 1 開始一ヶ月前)にプレイ開始。
League Of Legends の"ほぼ"第一世代のプロ(当時は Qualifier が今と違ったのでプロの定義が曖昧だった)のひとり。

 

ホスト: LoL にハマっていったきっかけは?

プレイ開始当時、ベータプレイヤーはみんな知り合いみたいな感じだった。そこに、ランクマッチで 24 戦 23 勝みたいなすごいスコアでいきなり現れて、周囲から「こいつ誰だ!?」って思われるようになった。たまたま過去に他のゲームでつるんでいた友達がベータに参加していたので、その友人を通じてコミュニティ内の他のメンバーと親しくなったんだ。しかし Esports のシーンにおける過去 5 年は、まるで一世紀のように感じられるね。未だに発展途上だけれど。

 

シーズン 2 が始まる前はまだ LCS(League Championship Series、LoL のプロリーグ)もなく、今ほど大会運営も整備もされていなかった。プロとして活躍するためには色んなサイトで開催されるオンライン大会で勝ち上がり、サーキットポイントを獲得していく必要があったんだ。だからそういった大会に参加しなければポイントは増えない。おまけに当時は一部の大会が完全招待制だったりと本当にクレイジーだった。ある程度の知名度がないと大会に参加することすらできなかったんだから。

 

ホスト: League Of Legends がプリシーズン 2 からシーズン 2 ワールドチャンピオンシップ、そして LCS へと進化を遂げていく中で、プロプレイヤーとして活動するのはどんな感じでした? LCS が発足してからは、毎週ファンの前でプレイすることになったりしたわけですが。

とにかくクレイジーだった。シーズン 2 の時代には Twitter のフォロアー数がすごい勢いで増えた。Twitter がファンと交流する唯一の場所だったというのもあったし。そして LCS が始まった後は、道を歩いていても気づかれるくらいになった。アジア人が多い場所だとなおさらだったかな。「うわ Scarra だ!」って大きな声で言われたり。本当に、LCS が契機になってものすごく名が知られるようになった感覚はあったよ。

 

ただ、色々なことがキッチリしていく過程で、失われてしまった面白さもあるにはあるよね。たとえば、海外遠征なんかは今ほどきちんとしていなかったから、韓国に行った時に凍え死にそうになったりした。タクシーに乗って行き先を告げたんだけど、ぜんぜん違うところで降ろされて、言葉は分かんないしどうすればいいんだ! って。

 

でも当時のほうが国際的な交流が盛んだったよね。今も IEM とかオールスターとかができて国際色みたいなものは豊かになってきたけど、当時は本当に色んな場所で面白い人に会えた気がするな。まあ最終的に2週間毎に国際線に乗って移動するのがだるくてホント嫌になったんだけど。学校も休んだし。それが今や毎週同じ会場で試合ができるんだから... どう言っていいかわからないけれど、安定は悪いことじゃないよね。

 

Jatt: 今は色んな事に配慮が行き届いているから、もう二度と同じような状況にはならないと思うけれど、あの時代を過ごせたことは良い経験だったよね。

 

そうだね、今や Team Solo Mid みたいな大きなチームの選手になったら、その時点で Twitter のフォロアー数が 0 人でも、スプリット(四半期の区切り)の終わりには 15 万人くらいになる。僕の時は何年もかかったのにね。ソーシャルメディアの盛り上がりがすごい。

でも昔の、草の根運動的なアマチュア感ていうのは失われてしまったよね。例えば今プロになったら、ブランディングとかいろんな事が整備されてるから、Twitter でファンとやりとりするときも距離を取ってしまう。つまり、以前は自分が属していたコミュニティから、一歩距離をおいてしまう。あの近くてゆるい感じと、安定した環境ってのはトレードオフなんだろうね。

 

ホスト: ちょっと状況は異なるけれど、北米プロチームの Renegades に所属していた Remi 選手(注:初の女性プロ選手として注目を浴びたものの「落ち着いてプレイすることができない」という理由でレギュラーから外れたことで話題になった)もそれに関係するところがありそうですね。それまでは、ファンと近い距離でやりとりしていたのが、突然何十、何百万という目にさらされることになるわけだから。その点 Scarra さんはどう対応したんですか?

 

自分はそのへんうまくできなかった。自分のパフォーマンスが悪くなった理由の一つも、メンタル的な「サポート環境」が整っていなかったからだと思ってる。なんかの研究結果で見たんだけど、こういうスポーツをやってる人やストレス負荷の高い環境にいる人は、誰かよりかかれる人が必要なんだって。友達とか、家族みたいなね。


でもヒューストンを離れた自分には、両親も家族も地元の友達も近くにいなかった。それに韓国だ LA だって移動も多かったから仲の良い友達をつくるのも難しかった。そんな時 Twitter とかで「いいプレイだったよ」とかそういう言葉が飛んでくれば助けになるんだろうけれど、飛んで来るのは「ヘタクソ」とか「さっさとやめろ」とかなんだよね。そんな中で「サポート環境」が整っていなかったから、色々と歪んでしまった。もっと効果的に対処する方法もあったはずなんだけれどね。今はさすがにそのへん理解しているけれど。距離の取り方とか。でも当時は「どうしよう」、「何が悪かったんだろう」って思ってしまってた。

 

そんな時自分が思いついた解決策は、「もっとプレイしよう」だった。一日 14 、いや一時期は 16 時間プレイした。その時は燃え尽きたから結局 14 時間に戻したけど。スプリットが終わるまでそんな感じだった。あの時はチームメイトですら信じてくれなかったもん。「俺、朝 7 時に起きてから、チームの模擬戦が始まる昼過ぎまでプレイしてるのに、それ以上プレイできるわけ無いじゃん」って言われた。まあ、単に自分はチーム練習終わった後も深夜までプレイしてたんだけど。もちろんそんなの、効果的な上達方法じゃなかった。でもそれしか思い浮かばなかったんだ。

 

ホスト: それってコーチングの問題ですかね?

 

そうだと思う。もちろん当時だってチャンピオン同士の相性とか対処方法とかは他のプレイヤーと Skype で話をよくしたし、自分のプレイを見直して、分析して、改善を試みてたけど、結局自分の一番の欠点である「意思決定力」は高めることができなかった。だから操作技術的には上手になっても、プレイヤーとしての技量の底上げにならなかったんだ。

 

Jatt: これってあまり語られない問題だよね。誰も「自分は批評とうまく向き合うことができません」なんて言いたくないし。でもフィードバックからノイズを取り除くのってすごく難しい。だからこそ、サポート体制を整えるのってすごく大事だ。自分が下手を打った時、それを「正しい方法」で伝えてくれる、「信頼できる相手」がいることがどれほどの意味を持つか。もちろんそれは、上手くいった時にはそれを認めてくれる相手でもある。でも TwitterReddit はその役割を果たしてくれない。否定的意見が多いし、意地の悪いコメントも多い。そんなのに、スポーツの経験とか、そういう立場になった経験がない人が、対処できるわけがないよね。高校卒業したばかりのコはもちろん、大人にだって難しいことだ。

 

プロ選手はチームに所属しているわけじゃない。で、サポート環境がない場合、チームこそがサポート環境になるよね。チームのみんなが「お前よくやってるよ」って言ってくれたら、「おお、自分はよくやってるんだ」って思う。見知らぬ誰かがオンラインで何言ってても、チームのほうのいうことを聞くよね。ただし、そのチームメンバーが「お前マジダメだわ」とか言うようになったら、精神的ストレスは溜まり続ける。自分が退団する直前の Counter Logic Gaming はお世辞にもいい「サポート環境」を提供してくれたとは言えなかった。一人だけ親身になってくれる相手はいたけど、他のメンバーは「彼、上手くないよね」、「でもまあ、いつか輝く時が来るかもね」みたいな感じだった。それって上達するのに最適な環境とはいえないよね。今はそんなこと心配する必要はないと思うけどね。心理学の専門家とか入ってきてるし。でもそういう環境が整う前は、チームの中の雰囲気が険悪で、だれもサポートしてくれなくて、「自分を信じきれなく」なってチームを去ってしまうってことが実際に起きていたと思う。

 

Jatt: そんな環境でプレイすれば、ゲーム内容にも自ずと意識が反映されてくる。そして、その結果が、さらに自己肯定感を失わせる。そういうコーチング辺りのことは、Esports まわりでもゆっくりと理解を深めていっている最中だよね、今。

 

ホスト: 引退に関してですけど、年齢による反応速度の低下って大きな要因でしたか? 自分は元カウンターストライクプレイヤーだったんだけど、スナイパーとして、ms 単位で反応速度が落ちてきたのを感じたんですよね。自分の頭では理解できて、脳から指示を出そうとしているのに、体がついてこない感覚があった。でも対戦相手はできる。自分より 1 ms 早く動いてくる。そういう感覚はありましたか?


それは感じなかったかな。個人的には、上達するためにはどれだけの時間を費やしているかがモノをいうと思ってる。一日は誰にとっても平等に 24 時間しかない。毎日模擬戦を 6 時間やって、そのあとも個人的にランクマッチをやってれば、技術的な部分はついてくる。と、自分は思ってる。そして、自分は下手になったとは思ってない。周りが上手くなったんだと。ただ、自分の弱みはゴーサインを出したりする「意思決定力」の不足にあった。でもそれって技術的な練習をしていても身につかなくて、誰かに習う必要があるものだったんだ。皮肉なことに、自分は Counter Logic Gaming や Dignitus のコーチをやっている時に、所属選手である Link 選手や Aphromoo 選手からその「意思決定」のやり方を学んだんだ。技術的な能力を磨く時間を犠牲にしてコーチの仕事をすることで、結果的に欠点を埋めることができた。


その後コーチをやめた後、得た知識を活かしてプレイヤーとして復帰しようと思ったんだけれど、新しいメンバーと一緒にチャレンジャーシリーズ(プロリーグの下にあるリーグで、ここで好成績を収めることでプロリーグに上がれる)を戦うのは相当しんどかったね...荒野のウェスタンッて感じ。1、2 ヶ月がんばったけどやる気が完全に削がれちゃった。

チャレンジャーシリーズといえば... シーズン 1 や 2 の頃はチャレンジャーチームくらいだとみんな平気で契約違反してたんだよね。「お前は成績残せてないから金払わない」っていって、その選手が他のチームに行くとか。自分が知ってるだけでも 2、3 件はあった。ひどい話だよ。Riot は絶対そんなの許さないだろうけれど、結構あったんだよね。他にも、時間に遅れてくるとか。

ホスト: これから、今まで身につけた知識をもって後進育成にあたるとかは考えないんですか?

どうだろう。LCS を引退した後にセルフブランディングをしてそういうことを仕事にするのもあるかもしれないけど... 今は選手の実力が上がってるからね。自分が初めてコーチをした時とかは、一分ごとに「次の作戦目標は何だ?!」って声かけて、誰かが必ず答えるようにするとかやってたけど、今じゃチャレンジャーのチームでも、「1 分後にドラゴン取るから Top はレーンを押して。それから周囲のビジョンを確保」みたいなことを誰もがやってる。それって 2、3 年前にはなかったことなんだよね。今は多くのプレイヤーがよくゲームを理解してる。

昔ある大会で、メンバーが一人来られなくて補欠メンバーが代わりに出場することになったんだけど、当時自分は Mid ポジションを担当してたんだ。で、補欠の選手に聞いたの。「君、ロールどこ? チャンピオンは?」そしたら「Mid で Morgana です」って答えだったから、急遽自分が Top に行って、相手チームが Morgana を Ban しませんようにって祈ってた。自分のロールが変更になったけど、トーナメント戦で何日も続くから勝ち進むうちになんとかなるだろみたいなかんじで。今じゃあ絶対にありえないけど、当時はそれで勝てたんだよね。それくらい進化してる。

 

ホスト: 今じゃコーチがいて、アナリストがいて、アナリストの部下としてさらに別のアナリストがいたりする。何もかも洗練されてきましたね。

 

Jatt:  個人的には今後 5 年 10 年で、プレイヤーの年齢って上がっていく可能性はあると思うんだ。理由はいくつかある。さっき Scarra は「自分は下手になったとは思ってない。周りが上手くなったんだ」と言ったけど、それは正しいと思う。当時の名プレイヤーが他を圧倒していたのは、最初に「手法」を編み出していたから。その後、他の人がそれを模倣して、その後興味を持つ人が増えて、プロになりたい人の人数も増えた。今や、チャレンジャーシリーズの参加希望人数は凄まじいことになってる。

 

で、その中からプロになるのは、強い情熱とか、天性の才能とかを兼ね備えた人だけだ。でももし、そういう人が 22 歳くらいになった時、生活のために毎日 8 時間仕事をしなくちゃいけないとか、将来のために学校でいい成績を取っとかなくちゃいけないとかってなったらプロとして活躍できる年齢は低いままだろうけれど、色々な支援体制が整って、生活とか学校とか気にせずに LoL に専念できる環境ができたとしたら、24、5 歳、その先もプロとして活躍することが可能だと思う。そして 1 ms の反応速度の遅れは、長年の経験で埋め合わせることが可能になると思う。

 

おおむね同意見だけど、自分は少し違った見方をしてるかな。年齢を重ねるってことは、「自分のやり方が固まってくる」ってことでもある。ゲームをどう理解するか、特定の物事をどう解釈するか、細かいことではどこにワードを置くかといかそういうことをね。でも逆にそういう「俺はずっとこれでやってきた」って行動が、必ずしも最善ではないと思うんだ。常に自己評価を更新し続けるのってすごく大変だよ。そこでコーチの出番かもしれないけどね。「~~するべきだ」って言ってくれる人がいれば違うだろうし。

 

コーチの他には「後輩メソッド」もあると思う。弟子みたいに「後輩(注:ホントにコーハイと言ってました)」を持って、指導してあげる。そうすると後輩は「なんでココでこうするんですか?」みたいな質問をしてくる。もちろんアホみたいな質問も受けるだろうけど、でもたとえば「なぜここにワードを置くんですか」という質問に対して「あ、こっちのほうがいい場所だね」っていう瞬間も訪れるかもしれない。後輩のプレイを見ていて、「今 Bot に向かうの確かにアリだな」と、自分の行動と比較することで自身のクセを修正していくことも可能かもしれない。もちろんそのレベルの客観性を持つのは難しいけれどね。

 

本来はそこをコーチが埋めるべきだと思うんだけどね。客観性を持った第三者として、プレイヤーを導くのがコーチだから。でも正直言って、今 LoL のコーチってそんなに質が高くないと思ってる。だってバスケやアメフトのコーチと待遇を比較してみてよ。「給与は 2500 万、家族のぶんも含めて引越し代は全部こちらが持ちます、ご子息の学費は無料にします」みたいな待遇で、コーチもスポーツ科学とか専攻してたりする。対して LoL では、なんというか叩き上げの人がコーチになる。もちろん心理学者とかは外部から入ってもらってるわけだけど、ほとんどの人材は元プレイヤーだ。でもここからさらに Esports が盛り上がって、市場規模が大きくなったら、適切なマネージメント陣営を持つところが増えるんじゃないかな。そうなればプレイヤーも能力を最大限に発揮できると思う。そういった中で、自らを柔軟に成長させていけるプレイヤーは、今よりも長い期間プロとして活動できるようになるだろうね。

 

2016 EU LCS Spring Split: OG vs H2K: W6 D2 解説翻訳

 

今週はヨーロッパの LCS から、今シーズン不調にあえぐ Origen と首位を走る H2K の試合を紹介したいと思います。なんでこの試合かというと自分が個人的に Vitality と H2K の試合がすごく好きだからです。 W6 D1 では Vitality vs H2K という大変見応えのある試合もあったので、興味のある方はそちらもぜひ! 長い試合ですが見応えは抜群でした。

さて、以下より解説をつまみ食い翻訳したものです。ご笑覧ください!

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 Pick & Ban

f:id:LYE:20160206004408p:plain H2K Kalista Ban

Forggivengre 選手は Kalista プレイしないので相手にも取らせたくないというところでしょうか。

f:id:LYE:20160206004330p:plain  H2K Lulu Ban

キャリーするチャンピオンを守る性能が高い Lulu を Ban ですね。OG ADC の Zven 選手がスノーボールするのを防ぐ狙いでしょう。特に今は Kog Maw が強いですからね。Lulu と組み合わせさせるわけにはいかないでしょう(H2K は最後の Ban で Kog Maw を指定し、Zven 選手を狙い撃ちするような Ban に)。

 

f:id:LYE:20160206005023p:plain OG Nidalee Pick

OG 側、まずは Nidalee を 1st Pick 。

f:id:LYE:20160206004405p:plainf:id:LYE:20160206004531p:plain H2K Alistar & Lucian Pick

(Pick 前段階で予想)OG SUP Mithy 選手の得意な Alistar と、ADC として Lucian を押さえるんじゃないですかね。Corki は今も Flex Pick(複数のロールがこなせる)としていい手ですが、パッチで弱体化が来て以前ほどの強さはないですから(結果その通りに)。

f:id:LYE:20160206004526p:plainf:id:LYE:20160206004503p:plain OG Corki & Gangplank Pick

はい Corki が来ましたね。ただここで Gangplank はやや心配なところです。H2K はそもそもレーン戦に強いチームなのでレーン戦が強くない Gangplank は心配です。また JGL の Nidalee はレーンで勝っているところに Gank に行くほうが良いチャンピオンなのでなおさらです。

f:id:LYE:20160213132156j:plainf:id:LYE:20160213131429j:plain H2K Lee Sin & Nautilus Pick

まだ OG 側の Mid が確定していないので、H2K は最後まで Mid ピックをしないほうが良いでしょう。そして効率よくジャングルを回って強みを作る Nidalee に対して(序盤に強い)Lee Sin を持ってくるのは良い作戦だと思います。

f:id:LYE:20160213131818j:plainf:id:LYE:20160206005003p:plain OG Ahri & Tahm Kench Pick

この状況なら Braum 一択だと思ったのですが... Tahm Kench ですね。ちょっとびっくりしました。たしかにフォーカスされた味方を飲み込めるのは強みです。Nautilus の Ult を見てから味方を飲み込んであげられるのもポイントです。

f:id:LYE:20160222155156j:plain H2K LeBlanc Pick

ここで Ahri に対して LeBlanc を当てれば、うまくやれば Mid のレーン戦を勝てるので、Top と Mid の両レーンで押せることになります。うまくやれば、ですが。もちろん LeBlanc のディストーションDistortion)にチャーム(Charm)を合わせれば論理的には Ahri が勝てるわけですが、ディストーションDistortion)の方向でフェイントされることもあるので現実的には難しいですけれど。

 

チーム編成

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Q: OG 側はレーンスワップをしかけてくるでしょうか?
A: いい質問ですね。Lucian & Alistar に対して Corki & Tahm Kench だと Lucian & Alistar に多少有利ですし、Nautilus と Gangplank だと間違いなく Nautilus のほうが有利になりますから、OG 側としてはレーンスワップを仕掛けたいと思います。

 

試合動画

youtu.be

試合開始直後の小競り合いで Leblanc NautilusFlash を使用

これは大きいですね。OG にとっては最高の、H2K にとっては避けたかったスタートになりました。

試合開始 3 分半

PowerOfEvil 選手、最初の 2 ウェーブをしっかり押しこむことで、3 ウェーブ目をしっかり自軍タワー手前に持ってきました。現時点ではワードもなし。これで Nidalee が Gank するお膳立てができました(結局仕留め損ねたものの、LeBlanc はさらに CS 差をつけられ窮地に)。

試合開始 8 分

これで Ahri も Gangplank も Lv 6 となり、OG が懸念していた時間帯は過ぎたと思います。この試合は Objective の取り合いになっていて、未だにスコアも 0-0 ですが、序盤が心配だった Gangplank にとっては有利な流れになったと思います。

試合開始 14 分~

H2K はピンクワードを 3 本立てていて、ビジョンをしっかり確保していますが、OG はそれができていません。なので H2K の誰かがマップから消えると、OG 側には相当なプレッシャーがかかります。これは大きいです。H2K の強みは、状況ができたから何かを実行するのではなく、相手の行動を予測して作戦展開できる点ですね。
たとえばこの状況だと、H2K MID Ryu 選手が Mid のミニオンを処理して横の茂みに入るだけで、OG 側にとってはプレッシャーになるわけです。どこにいるかわからないですから。ただミニオンを処理して、茂みに入るを繰り返すだけで OG 側にプレッシャーを与えられる。

試合開始 19 分

しかし H2K は見事にビジョンを取っていきますね。現在敵の Blue ジャングルを網羅しました。H2K は昨日 Vitality に負けたとはいえ、EU トップチームです。彼らはビジョンを Objectiveのように扱うんですよね。レーンをプッシュしたら、間のジャングルのビジョンを確保し、また次回確実にレーンをプッシュできるようにしている。そして条件が整ったら Siege を始めるわけです。

 

しかし今回は OG が見事な切り返しで、Gangplank が Bot の Tier 2 タワーを折りつつ、 Ult で自軍 Top Tier 2 が折れるのを少しだけ遅らせ、Mid Tier 1 まで削れました。いいローテーション(チャンピオンがレーン間で入れ替わること)だと思います。

 

今回 H2K は Wave Clear(ミニオン処理能力)が弱く、Lucian の二挺掃射(The Culling)に頼るしかないので、できれば Nautilus のテレポートや LeBlanc の Flank(横からの奇襲)を狙いたいですね。それができず、OG が H2K メンバーの位置を確認できていたら、タワーをあっという間に折られてしまいます。

いっている間に横から Nautilus が来ました。今回は Nautilus の Ult も温存して引いたし、Kill もタワーも取れませんでしたが、実に H2K らしいやり方です。これでまた全レーンを押して、ビジョンを確保し、どこかでグループし、再度しかける。あるいはその過程で相手の Summoner Spell を使わせる。そしたらまた仕切り直せばいい。今のメタを完ぺきに把握した作戦展開をしています。

 

そうしている間に Botミニオンが OG 有利になってます。H2K は誰かを送り込まなくてはいけませんが... テレポート持ちの Nautilus が向かいましたね。ただ OG 側はビジョンが取れてないので、Nautilusミニオンに接触してマップに映るまで Mid の Siege で強気に出られません。そしてようやく Nautilus を視認して Siege を始めようかと思ったら、Lucian の二挺掃射(The Culling)でミニオンが処理されてしまった。これで OG はまた仕切り直さざるを得ません。

試合開始 28分 Baron

H2K 側が Baron を開始したところに OG が入ってきましたが、Lucian は二挺掃射(The Culling)でゾーニング、LeBlanc は様子見、Alistar は早すぎる突進、Baron を殴っているのは Lee Sin だけと、チームが共通の目標に向かって行動しなかった。OG は逆にそのチャンスを見事に活かし 3 Kill と Baron を手にしました。しかし Tahm Kench はまたしてもよい働きをしました。あの保護力は Braum には決して出せないです。

しかし後半戦になって Corki は失速してきました。OG がこのゲームを勝つには Gangplank がキャリーする必要がありますね。

試合開始 39 分:何度かの Siege/Team Fight を経て H2K が Top/Mid Inhib を破壊

ここまでくると、OG に残された道は何らかの不意打ちをしかけることだけですね。普通にやっていても相手に手を読まれてしまいます。が、ビジョンを押さえている H2K 相手に不意打ちを仕掛けるのは非常に難しいです。そして H2K もそれをしっかり理解している。ビジョンが取れていない茂みには近づきません。OG の戦力をきちんと把握しているんです。しかし Inhib が 2 つ落ちている状態で OG は非常によく耐えていますね。

(その後 Bot Inhib タワーを Siege している最中に Team Fight となり、そのまま H2K が押し切り勝利)

 

中盤戦で何度かミスがあり、OG もそれをうまく突きましたが、結局 H2K の勝利となりました。


来週はコーチ特集ということで H2K コーチを呼んで話をする機会がありますが、非常に興味がありますね。というのも、H2K はあれだけチームメンバーの変更が頻繁であるにも関わらず、チームの柱であるマクロプレイ(大局的・戦略的な行動を中心としたプレイ)の質にずっとブレがないんです。


解説デスク:チーム編成について

H2K のチームは Hard Engage 持ちの Tank TOP に Split Push や Pick(孤立している相手を瞬殺)が可能な MID と、安定した BOT という安定感の高いチーム編成でした。対する OG は、勝つ方法が少し限定された、作戦展開の難しい構成になっていたと思います。具体的には Gangplank と Corki の Trinity Force が完成した時の Power Spike を活かす必要があること、そして Gangplank と Ahri のアイテムがある程度揃ったところで Baron Bait などを仕掛ける必要があったと思います。

 

あと OG 側の落ち度としては、欧州トップクラスの ADC である Sven の不用意なポジショニングが悪かったことが挙げられます。昨日の Elements 戦もそうでしたが、つかまり過ぎている。今日もMithy の Tahm Kench がいなかったらもっと何回も死亡していたでしょう。

 

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※実況解説者は Krepo 、解説デスクは Deficio さん & Shook (Vitality JGL) 氏でした。

以上、北米サーバーで遊んでいる LYEn00b がお伝えしました。ご意見などはこちらのコメント欄か twitter: @lye_ までよろしくです。なお書いている本人は Season 5 Silver II くらいなので理解が追いついていないところや間違いがあるかもしれません。見つけたらこっそり教えてくださいませ...

2016 EU LCS Spring Split: FNC vs EL W5 D1 解説翻訳


EU LCS Week 5 は Fnatic vs Elements の試合運びが流れるように美しかったので (一度目の Baron Bait 以外)、解説をつまみ食い翻訳してみました。Nautilus のスプリットプッシュが凄まじく、チェスや将棋のような面白みを感じました。今週あたりからよく Solo Queue で見られるようになった戦法だそうです。それでは、以下解説です。

 

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Pick & Ban

Fnatic Ban

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Elements Ban

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SPRATTEL 選手と当たるときは Alistar、STEVE 選手と当たるときは Fiora を Ban するのが良いです。それぞれの一番得意なチャンピオンですからね。今回 FNC は青サイドなので、強いチャンピオンを Ban しなくても最初に必ず一人確保できますし。

 

f:id:LYE:20160206004531p:plain  FNC Lucian

Kalista が Ban されたので、まず ADC に Lucian を取りますよね。Corki は強いですけど Mid 用ですし。また、Lucian と比較すると序盤に弱いという面もあります。

 

f:id:LYE:20160206004526p:plainf:id:LYE:20160213131948j:plain  EL Corki & Braum

残っている強いチャンピオンを押さえましたね。

 

f:id:LYE:20160206005023p:plainf:id:LYE:20160206004644p:plain  FNC Nidalee & Thresh

Sup の Klaj 選手はプロ入り前に Thresh の使い手として有名だったんですよね。欧州ではセミプロの Sup はビッグプレイを自分で作れるという長所から、Thresh を得意とする選手が多いですが、彼もまたその一人です。プロ初戦で慣れたチャンピオンを使えるのは良いですね。

 

f:id:LYE:20160213132156j:plainf:id:LYE:20160213131428j:plain  EL Lee Sin & Malphite

EL Jgl Gallius 選手は今強いチャンピオンもしっかりプレイできますが、実は Lee Sin は得意チャンピオンです。ビッグプレイを生み出すのを好みます。今日はどうなるか。もう一方の Malphite ですが、相手の Top が分からないこの時点でブラインドピックするのは... どうなんでしょう。

 

f:id:LYE:20160213131429j:plainf:id:LYE:20160213131818j:plain  FNC Nautilus & Ahri

おっと Top に Nautilus ですね。ここで Nautilus が Pick される理由としては、Corki の逃亡手段 Valkyrie (ワルキューレ機行) を使っても Ult の Depth Charge (爆雷発射) で確実な打ち上げ CC が入るという点があると思います。EL がマークスマン 2 枚という構成なのでこれはかなり大きいです。

... それに加えて、相手が Malphite というタンクである点。Malphite がどれだけ殴ってもおそらく Nautilus は仕留め切れないですが、それに加えて最近 Solo Queue で流行しつつあるアイテムがあるんです。Zz'Rot Portal がそれで、Tank 相手にこれを設置すると、まず設置された Portal を破壊するのに時間がめちゃくちゃかかるし、レーンは常に押し続けられるという。これ本当にウザいんです。おそらくこの試合でも、Top は常時そうなるんじゃないでしょうか。さらに Banner of Command まで加わると、とにかく殴っても殴ってもレーンを押せないという状況を作れるんですね。

 

f:id:LYE:20160213132523j:plain  EL Ezreal

Corki は Mid のほうが輝きますから、 Ezreal を ADC にという感じですね。ただダメージが出るまでに時間がかかるので、最初はレーンスワップが必要でしょう。Lucian & Thresh コンビに対して Ezreal & Braum で真正面からレーン戦するのは相当無理がありますからね。

 

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試合開始

www.youtube.com


試合開始から 3:30 

(レーンスワップで FNC が Bot Tier 1 タレットを破壊したのに EL が Top Tier 1 タレットを破壊しきれなかったことについて)
EL、これはいけません。レーンスワップできちんとタワーを折りきるのは基礎の基礎です。何度でも練習しなくてはいけないところ。模擬戦でも必ず実行するはずの手順なのに。後半戦になり、状況が複雑になってからの判断であれば練習しきれなくても理解できますが、レーンスワップしたらタワーをちゃんと折るというのはどの試合でも必ずやること。これはいただけません。これだけで 1000 ゴールド差がつきます。

 

(その後さらにもう一度スワップし、 FNC は Top Tier 1 タレットも破壊。その時は EL も Bot Tier 1 タレットを折り返せた) 二度目は一応きちんと対応できましたが、Top と Bot の Tier 1 タレットを折られた後でビジョンが確保できていないので、EL の Blue Buff サイドのジャングルが FNC のものになってしまいましたね。これでは怖くて入れません。ここでさっき EL が折り切れなかった Top Tier 1 タレットの存在が効いてきます。FNC は Top の心配する必要がないので、 Bot Tier 2 側のジャングルに人を割くことができる。だからここで敵ジャングルを支配してさっさと Tier 2 タレットの Siege ができるんです。


Nidalee について

シーズン開始直後、Nidalee の Pick には消極的なチームが多かったのですが、最近はその認識が変わりつつあります。というのも、前は「早い段階で Kill を取ってスノーボールするジャングラー」という位置づけだったのが、「すさまじい速度で Farm して相手ジャングラーに Lv/Gold 差をつけられるチャンピオン」という認識に変わったからです。それに加えて、Bot Duo と合流して Siege するときにも、ADC の AS を上げて、さらに自身も遠距離からタワーを削れる。

試合開始から 10:15

 (Nautilus が Banner of Command の材料を揃え始める)
これは Banner of Command > Zz'Rot Portal のパターンですね。コレの何が厄介かというと、まず Top 同士でやりあっている時には、離れた場所で 4v4 が始まっても両者ともに Teleport ですぐに駆けつけることができるじゃないですか。ところが Malphite のようなタンクでは、Portal から出てくる Voidlings、Banner of Command で強化されたミニオン (通常攻撃でしか倒せない) 、そして Voidlings の発生源である Portal を処理できないんです。しかしその処理のために他のチャンピオンとスイッチすると、今度は Nautilus だけが Teleport で集団戦に参加できて人数差を作れる。そういうところが厄介なんです。

また、Nautilus のレーン他のメンバーが合流してきて Siege する場合には、相手にハードエンゲージを強いることができる。相手としては、そのままではじわじわ削られるだけですからね。

でもこれは相手の Top が Tank の時だけ機能するんですよ。たとえば相手が Fiora だったら、Portal がすぐ壊されて無意味ですからね。

またこのビルドだと、多少の防護力は揃うとはいえ通常のタンクと比べたらずいぶん耐久力にかけますから、集団戦でタンクをするのは難しいですね。このビルドの目的は、とんでもなく嫌らしいスプリットプッシュをすることにあります。

しかしプロの試合で Portal をどこに置くのかは興味がありますね。

 

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(配置場所はココでした)

 

試合開始から 23:30

(Bot レーンに Banner of Command Buff ミニオンと Zz Portal を設置した Nautilus が、Bot を離れて他メンバーと合流していくのを見て)
Malphite は現在 Teleport がクールダウン中です。ということは、ここで Nautilus が他のメンバーと合流すると Malphite は Bot レーンに行けず、同じくチームメンバーと合流せざるを得ない。そうしている間にも Bot レーンのミニオンはどんどん押されていくけれど、他に選択肢がないんです。

(その後、Bot の Inhib タレットをミニオンたちが攻め立てる中 FNC が Baron を開始、追いかけてきた EL と集団戦、FNC が勝利して Mid Inhib まで破壊、再度仕切りなおして Baron を取り、そのまま集団戦を制して勝利をおさめる)

アナリストデスク: チーム編成について

EL の編成は先日の G2 と似た感じで、 Poke もできるいい編成だったと思うのですが、Malphite へのカウンターとして FNC が Nautilus をピックしたのが大きかったですね。Malphite がチーム唯一のハードエンゲージ持ちだったのに、レーンに縛られてしまった。Malphite なしで、しかもゴールド的にも劣勢だったので、4v4 のにらみ合いをしていればあとは Ahri のチャームが刺さるか、Thresh のフックがかかるかになってしまいます。

 

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※実況解説者は Deficio さん、アナリストデスクは Krepo さん & Cyanide さんでした。

以上、北米サーバーおよび日本CBTサーバーで遊んでいる LYEn00b がお伝えしました。ご意見などはこちらのコメント欄か twitter: @lye_ までよろしくです。なお書いている本人は Season 5 Silver II くらいなので理解が追いついていないところや間違いがあるかもしれません。見つけたらこっそり教えてくださいませ...