LYE の League of Legends メモ

League of Legends プロリーグ LCS の解説を翻訳したり、同作や MOBA ジャンルで使われる英語を説明したりする予定。

2016 EU LCS Spring Split: OG vs H2K: W6 D2 解説翻訳

 

今週はヨーロッパの LCS から、今シーズン不調にあえぐ Origen と首位を走る H2K の試合を紹介したいと思います。なんでこの試合かというと自分が個人的に Vitality と H2K の試合がすごく好きだからです。 W6 D1 では Vitality vs H2K という大変見応えのある試合もあったので、興味のある方はそちらもぜひ! 長い試合ですが見応えは抜群でした。

さて、以下より解説をつまみ食い翻訳したものです。ご笑覧ください!

 f:id:LYE:20160222154746p:plain

 Pick & Ban

f:id:LYE:20160206004408p:plain H2K Kalista Ban

Forggivengre 選手は Kalista プレイしないので相手にも取らせたくないというところでしょうか。

f:id:LYE:20160206004330p:plain  H2K Lulu Ban

キャリーするチャンピオンを守る性能が高い Lulu を Ban ですね。OG ADC の Zven 選手がスノーボールするのを防ぐ狙いでしょう。特に今は Kog Maw が強いですからね。Lulu と組み合わせさせるわけにはいかないでしょう(H2K は最後の Ban で Kog Maw を指定し、Zven 選手を狙い撃ちするような Ban に)。

 

f:id:LYE:20160206005023p:plain OG Nidalee Pick

OG 側、まずは Nidalee を 1st Pick 。

f:id:LYE:20160206004405p:plainf:id:LYE:20160206004531p:plain H2K Alistar & Lucian Pick

(Pick 前段階で予想)OG SUP Mithy 選手の得意な Alistar と、ADC として Lucian を押さえるんじゃないですかね。Corki は今も Flex Pick(複数のロールがこなせる)としていい手ですが、パッチで弱体化が来て以前ほどの強さはないですから(結果その通りに)。

f:id:LYE:20160206004526p:plainf:id:LYE:20160206004503p:plain OG Corki & Gangplank Pick

はい Corki が来ましたね。ただここで Gangplank はやや心配なところです。H2K はそもそもレーン戦に強いチームなのでレーン戦が強くない Gangplank は心配です。また JGL の Nidalee はレーンで勝っているところに Gank に行くほうが良いチャンピオンなのでなおさらです。

f:id:LYE:20160213132156j:plainf:id:LYE:20160213131429j:plain H2K Lee Sin & Nautilus Pick

まだ OG 側の Mid が確定していないので、H2K は最後まで Mid ピックをしないほうが良いでしょう。そして効率よくジャングルを回って強みを作る Nidalee に対して(序盤に強い)Lee Sin を持ってくるのは良い作戦だと思います。

f:id:LYE:20160213131818j:plainf:id:LYE:20160206005003p:plain OG Ahri & Tahm Kench Pick

この状況なら Braum 一択だと思ったのですが... Tahm Kench ですね。ちょっとびっくりしました。たしかにフォーカスされた味方を飲み込めるのは強みです。Nautilus の Ult を見てから味方を飲み込んであげられるのもポイントです。

f:id:LYE:20160222155156j:plain H2K LeBlanc Pick

ここで Ahri に対して LeBlanc を当てれば、うまくやれば Mid のレーン戦を勝てるので、Top と Mid の両レーンで押せることになります。うまくやれば、ですが。もちろん LeBlanc のディストーションDistortion)にチャーム(Charm)を合わせれば論理的には Ahri が勝てるわけですが、ディストーションDistortion)の方向でフェイントされることもあるので現実的には難しいですけれど。

 

チーム編成

f:id:LYE:20160222154751p:plain

Q: OG 側はレーンスワップをしかけてくるでしょうか?
A: いい質問ですね。Lucian & Alistar に対して Corki & Tahm Kench だと Lucian & Alistar に多少有利ですし、Nautilus と Gangplank だと間違いなく Nautilus のほうが有利になりますから、OG 側としてはレーンスワップを仕掛けたいと思います。

 

試合動画

youtu.be

試合開始直後の小競り合いで Leblanc NautilusFlash を使用

これは大きいですね。OG にとっては最高の、H2K にとっては避けたかったスタートになりました。

試合開始 3 分半

PowerOfEvil 選手、最初の 2 ウェーブをしっかり押しこむことで、3 ウェーブ目をしっかり自軍タワー手前に持ってきました。現時点ではワードもなし。これで Nidalee が Gank するお膳立てができました(結局仕留め損ねたものの、LeBlanc はさらに CS 差をつけられ窮地に)。

試合開始 8 分

これで Ahri も Gangplank も Lv 6 となり、OG が懸念していた時間帯は過ぎたと思います。この試合は Objective の取り合いになっていて、未だにスコアも 0-0 ですが、序盤が心配だった Gangplank にとっては有利な流れになったと思います。

試合開始 14 分~

H2K はピンクワードを 3 本立てていて、ビジョンをしっかり確保していますが、OG はそれができていません。なので H2K の誰かがマップから消えると、OG 側には相当なプレッシャーがかかります。これは大きいです。H2K の強みは、状況ができたから何かを実行するのではなく、相手の行動を予測して作戦展開できる点ですね。
たとえばこの状況だと、H2K MID Ryu 選手が Mid のミニオンを処理して横の茂みに入るだけで、OG 側にとってはプレッシャーになるわけです。どこにいるかわからないですから。ただミニオンを処理して、茂みに入るを繰り返すだけで OG 側にプレッシャーを与えられる。

試合開始 19 分

しかし H2K は見事にビジョンを取っていきますね。現在敵の Blue ジャングルを網羅しました。H2K は昨日 Vitality に負けたとはいえ、EU トップチームです。彼らはビジョンを Objectiveのように扱うんですよね。レーンをプッシュしたら、間のジャングルのビジョンを確保し、また次回確実にレーンをプッシュできるようにしている。そして条件が整ったら Siege を始めるわけです。

 

しかし今回は OG が見事な切り返しで、Gangplank が Bot の Tier 2 タワーを折りつつ、 Ult で自軍 Top Tier 2 が折れるのを少しだけ遅らせ、Mid Tier 1 まで削れました。いいローテーション(チャンピオンがレーン間で入れ替わること)だと思います。

 

今回 H2K は Wave Clear(ミニオン処理能力)が弱く、Lucian の二挺掃射(The Culling)に頼るしかないので、できれば Nautilus のテレポートや LeBlanc の Flank(横からの奇襲)を狙いたいですね。それができず、OG が H2K メンバーの位置を確認できていたら、タワーをあっという間に折られてしまいます。

いっている間に横から Nautilus が来ました。今回は Nautilus の Ult も温存して引いたし、Kill もタワーも取れませんでしたが、実に H2K らしいやり方です。これでまた全レーンを押して、ビジョンを確保し、どこかでグループし、再度しかける。あるいはその過程で相手の Summoner Spell を使わせる。そしたらまた仕切り直せばいい。今のメタを完ぺきに把握した作戦展開をしています。

 

そうしている間に Botミニオンが OG 有利になってます。H2K は誰かを送り込まなくてはいけませんが... テレポート持ちの Nautilus が向かいましたね。ただ OG 側はビジョンが取れてないので、Nautilusミニオンに接触してマップに映るまで Mid の Siege で強気に出られません。そしてようやく Nautilus を視認して Siege を始めようかと思ったら、Lucian の二挺掃射(The Culling)でミニオンが処理されてしまった。これで OG はまた仕切り直さざるを得ません。

試合開始 28分 Baron

H2K 側が Baron を開始したところに OG が入ってきましたが、Lucian は二挺掃射(The Culling)でゾーニング、LeBlanc は様子見、Alistar は早すぎる突進、Baron を殴っているのは Lee Sin だけと、チームが共通の目標に向かって行動しなかった。OG は逆にそのチャンスを見事に活かし 3 Kill と Baron を手にしました。しかし Tahm Kench はまたしてもよい働きをしました。あの保護力は Braum には決して出せないです。

しかし後半戦になって Corki は失速してきました。OG がこのゲームを勝つには Gangplank がキャリーする必要がありますね。

試合開始 39 分:何度かの Siege/Team Fight を経て H2K が Top/Mid Inhib を破壊

ここまでくると、OG に残された道は何らかの不意打ちをしかけることだけですね。普通にやっていても相手に手を読まれてしまいます。が、ビジョンを押さえている H2K 相手に不意打ちを仕掛けるのは非常に難しいです。そして H2K もそれをしっかり理解している。ビジョンが取れていない茂みには近づきません。OG の戦力をきちんと把握しているんです。しかし Inhib が 2 つ落ちている状態で OG は非常によく耐えていますね。

(その後 Bot Inhib タワーを Siege している最中に Team Fight となり、そのまま H2K が押し切り勝利)

 

中盤戦で何度かミスがあり、OG もそれをうまく突きましたが、結局 H2K の勝利となりました。


来週はコーチ特集ということで H2K コーチを呼んで話をする機会がありますが、非常に興味がありますね。というのも、H2K はあれだけチームメンバーの変更が頻繁であるにも関わらず、チームの柱であるマクロプレイ(大局的・戦略的な行動を中心としたプレイ)の質にずっとブレがないんです。


解説デスク:チーム編成について

H2K のチームは Hard Engage 持ちの Tank TOP に Split Push や Pick(孤立している相手を瞬殺)が可能な MID と、安定した BOT という安定感の高いチーム編成でした。対する OG は、勝つ方法が少し限定された、作戦展開の難しい構成になっていたと思います。具体的には Gangplank と Corki の Trinity Force が完成した時の Power Spike を活かす必要があること、そして Gangplank と Ahri のアイテムがある程度揃ったところで Baron Bait などを仕掛ける必要があったと思います。

 

あと OG 側の落ち度としては、欧州トップクラスの ADC である Sven の不用意なポジショニングが悪かったことが挙げられます。昨日の Elements 戦もそうでしたが、つかまり過ぎている。今日もMithy の Tahm Kench がいなかったらもっと何回も死亡していたでしょう。

 

ーーー

※実況解説者は Krepo 、解説デスクは Deficio さん & Shook (Vitality JGL) 氏でした。

以上、北米サーバーで遊んでいる LYEn00b がお伝えしました。ご意見などはこちらのコメント欄か twitter: @lye_ までよろしくです。なお書いている本人は Season 5 Silver II くらいなので理解が追いついていないところや間違いがあるかもしれません。見つけたらこっそり教えてくださいませ...