LYE の League of Legends メモ

League of Legends プロリーグ LCS の解説を翻訳したり、同作や MOBA ジャンルで使われる英語を説明したりする予定。

BlitzEsports:CLG Darshan「NAのBo3→Bo1変更はそんなに悪くない」

最近独自コンテンツの質が高いことで個人的に注目しているBlitz Espotsチャンネルから、久々に翻訳記事書いてみます。だいたい全部拾って翻訳しましたが、細かいところはぜひ動画でチェックしてみてください。

CC(クローズドキャプション、いわゆる字幕)設定で英語を選ぶとテキストで読めるので、リーディングはいけるけどリスニングが苦手、という方なら余裕で理解できると思います。

 

個人的には「ゲーミングハウスは最適解ではない、次はオフィスを構えるべき」というのに時代の流れを感じました。

全体的にRiotに多少配慮した発言であるものの、かなり率直に話されているのではないかと思います。「Bo1でも全然変わらない」ではなく、「Bo1もそんなに悪くない」という表現なのがそれを端的に現しているかなと思います。

では以下、どうぞ。

 

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NA LCSがBo3からBo1に変更になる点について議論が白熱しているようなので、今日は自分の立場から「そんなに悪い話ではない」という意見を話してみます。

 

Q:ステージでの経験と練習について

主要な話題は「この変更のせいで他の地域に差をつけられてしまうのではないか」だと思いますけど、結局ファンとチームが本当に上を目指していきたいと思うなら一番影響が大きいのは「練習」です。

 

実際、ステージでプレイするのは毎週3~4試合です。一方その裏ではスクリムで30~40試合をプレイしていて、実際にチームが上達するのはこの時です 。TSMがずっと強豪であり続けているのも、ここがとても上手いからだと思っています 。TSMとはスクリムでもステージでも対戦してますけど、彼らは 北アメリカのどのチームよりも練習から多くを学んでいるし、そもそも練習の水準が高いと感じています。それも、その状態を長く続けてきている。だからこそ、ステージ上での試合数よりも練習のほうが重要だと思っています。

 

もちろんLCSのステージ上でも上達しますけど、個人的にはLCSステージは「テストの場所」であって「勉強する場所」ではないと思ってます。

だからBo3からBo1になって強いチームが変わることはないでしょう。結局はどういう練習をしているか?どういうスケジュールで動いているか?毎日どこまで己の限界に挑めるか?そしてチームとしての戦力を高めていけるか?がすべてですから。それが競技におけるチームの強さです。

 

LCKは、だからこそ歴史的に見ても常に北アメリカよりも強いんだと思います。練習体制やコーチングのインフラ、その他全てが北アメリカより高い水準にあるので。韓国がBoi3だから強いみたいなシンプルな話じゃないと思ってます。

北アメリカもチームの練習体制は毎年向上し続けていると思うので、この点でもあまり心配しすぎる必要はないのかなと思います。特に来年からフランチャイズ化もありますし。

 

各チームどんどんレベルアップしていくと思いますよ。CLGもThe Madison Square Garden Companyによる支援が入り、注入されるリソースは圧倒的に増えます(訳者注:今年7月末に同社はCLGの議決権を持つだけの株式を取得した)。だから自分は練習体制の未来も、北アメリカの未来も楽観的に見ています。Bo1になるからといってこの世の終わりというわけじゃない、と。

たぶん来年が終わって振り返れば、Bo1になったけど成績は良くなったね、という結果になるんじゃないかと。

Q:練習体制を向上させるには?

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スクリムについては、北アメリカのチームが改善すべき問題がたくさんあります。 まず、LCKの多くのチームは「オフィス」を持っているんですが、今後は北アメリカのチームもその流れに乗っていくことになると思ってます。要するに、仕事と遊びを分けるということで す。細かいことに見えるかもしれませんが、この差はかなり大きい。

ゲーミングハウスで朝起きて スクリムルームに行くのと、朝起きて身支度をして車でスタジオに向かうっていうのは精神状態を切り替える上で大きな違いになるわけです 。別の環境に身を置き、より真剣に向き合うということ。そのぐらい真剣に向き合う姿勢が非常に重要だと思ってます。

 

それからアカデミーチームが実力向上してきたことも大きな要因になると思っています。チーム内での競争が促進されるだけでなく、僕らにとっては実力のあるスクリム相手ができるということですから。組織体制が安定するほどアカデミーチームの実力も上がってくるはずなので、強いスクリム相手というだけでなく、僕らの誰かが不信続きになれば入れ替えも可能になるわけです。

(訳者注:この点についてはこちらの記事でDeficio氏とYamatoCannon氏が記事中盤でも取り上げており、リンクしている箇所も多いので興味のある方はご覧ください)

Deficio (中略)でもそういうひたむきな姿勢というのは、プロに求められるものじゃないですか? LCKのプレイヤーは、いつだってScrimから余すことなく学んでいる。他のどの地域よりもね。

個人的に、従来のスポーツ、たとえばフットボールとかと比較してなんでeSportsプロはそういうことができないんだろう?って疑問に思うんですが。

YamatoCannon たとえばEcho Foxは姉妹チームを持ってて、そのチーム間でScrimしてたりします。それだと、特定の目的に絞ったトレーニングができる。全く他人のチームとでは、相手のこともありそうはできませんからね。だからこれは僕の夢ですけれど…五年後くらいには10人以上が固定でScrimできたりするといいなと。そうすれば、特定の目的に絞ったトレーニングが行えて有益だと思うんです。ただのScrimだと同じことの繰り返しになりがちですからね。

Deficio 従来のスポーツとの大きな違いのひとつは、「スタメン争い」の有無でしょうね。NFLでもフットボールでも、若い頃から技術を磨いてきて、プロに入ってからも第一戦で戦い続けられるよう努力し続ける。そうしないと、自分の代わりが後ろにわんさかいるわけですから。でもLoLでは…特に現在のEUでは、控えを抱えているチームはとても少ない。だから現実的には、選手には練習で全力を尽くし続けさせるプレッシャーがかかってないんです。だって今YamatoCannonが「お前クビにして、ソロキューから代わり見つけてくるよ?」と言うことはまずないですよね。そして仮に言ったとしても、実際に降板させられるまでには時間がかかる。だから10人ロースターってのはいいですね。「お前真面目にやらないんだったら、次回から3試合こいつミッドのスタメンにするから」って言ってスタメン争いが生じるようになれば、誰もがもっと真剣に練習に取り組むようになる。それがもしかしたら必要なのかも。「スタメン落ち」というプレッシャーが。

今話した2点は来年、数多ある練習体制の問題における2大要因になると思っています。

 

個人的には今後、LCSが真剣さを増していくのが楽しみです。 自分がデビューしたシーズン3の頃も試合はBo1でしたが、当時自分はまだ17歳だったし、チームも組織構造と呼べそうなものは何一つなかった。真剣に取り組む環境というものがなかったんですよ。

Q:「奇策」で勝ててしまう可能性について

僕はデビュー以来全てのスプリットでプレイしてきて bo 1でも bo 3でも戦ってきました。で、昨今よく聞く懸念として「奇策やLv1のプレイで試合が決まってしまって、どこが強いチームかわからなくなるのでは」というものがあります。僕個人の見解としてはLv1というのは試合でも非常に大きな要因なのに、Bo3のときですら誰も突ききってない(Abuseされ尽くしていない)ポイントだったと思ってます。

この間のSplitにおけるCLGの試合を見直してもらっても、Lv1攻勢で大きな有利を築いた試合はありました。そしてその威力はBo3シリーズでも、シリーズを勝ち切るだけの力があるものです。

結局、みんなが今までそこを「徹底的に突ききっていない」というだけで、Bo3からBo1になるからといって変わるものじゃないです。だから影響力は変わらないと思ってます。

Q:Worldsへの準備という視点からBo3を見た場合

Bo1シーズンとBo3シーズンの両方でWorldsに出場した身としては、正直そんなに差はなかったと感じています。シーズン5と6でWorldsに行った時を比較しても、Bo3シーズンのほうが「準備が整っていた」と感じた点はありませんでした。チームの実力に影響したのは韓国での合宿や練習のほうでしたね。だから自分自身の経験からすると、シーズンの試合数は国際大会での成績に大きな影響を及ぼさないと思ってます。

 

Q:率直に短所を挙げると?

Bo1では、Bo3のような「勢いや流れ」、つまりモメンタムがないです。Game 1を落としてもチームのメンタルを強く維持し、ここから盛り返すぞという気持ちの流れを体験することができない。それはBo1では得られない経験。

Bo1になったらプレイオフまで経験する機会がなく、チームによってはプレイオフに出場できない。その点は今後注視する必要があるし、純粋にBo1になることで失われるものだと思います。

それもBo1に移行する副作用ですよね。僕はもう長いことプレイしているベテランなので、精神状態の管理方法も心得ていますが、経験の浅いプレイヤーにとっては顕著に影響が出てくるところなので、彼らがしっかり精神状態を管理できるようにしていきたいし、たとえチーム全体でもそうしたいですね。

Bo5で0-1、0-2になった時、「まだ勝てるよ」と思える精神状態を作っていくのは大変です。Bo3はそんなにきつくない。0-1までしかいかないので、次の試合取り返せばいいだけですから。でもBo5は全然違う。0-2から盛り返していくぞ!という気持ちを築くのは、個人としてもチームとしても相当にしんどいことです。この点はBo1では間違いなく欠ける点ですね。

 

正直、RiotがBo1にしていく最大の理由はマーケティング、視聴数ですよね。その点は落ち込んでいるわけで。コレに対してBo1は大変有効な対策になる。ただ僕がこの動画で言いたかったのは、「Bo1って言うほど悪くないよ」ってことです。パニック起こす必要はないと思ってます。

 

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以上、Season 7は駆け込みで振り分け線を終えてSilver IIIでシーズン終了したプレイ下手くそなLYEの翻訳でお送りしました。

なお最近はShotcallingさんが超読み応えのある最新情報を定期的に上げておられるので、まだチェックされていない方はぜひご覧ください。僕は完全に落穂拾いに回ることにしましたよ...Shotcallingさんすげえ熱量だぜ...。