LYE の League of Legends メモ

League of Legends プロリーグ LCS の解説を翻訳したり、同作や MOBA ジャンルで使われる英語を説明したりする予定。

Deficio 氏 & Krepo 氏、コーチの歴史と重要性について語る

f:id:LYE:20160302121143p:plain

 

先週の LCS は「Coaches Week」ということで、プロチームのコーチが解説デスクに呼ばれて話をしたりしていましたが、公式の Youtube チャンネルでは僕の好きな解説者 Martin "Deficio" Lynge氏と Mitch "Krepo" Voorspoels 氏がプロシーンにおける「コーチの進化」について語る短い動画が上がってました。ソイツが面白かった (し、先週の Scarra 氏のお話ともつながる) ので、今週はそれを聞き取り翻訳してみました。それでは、以下より翻訳です。

 

 

Krepo Season 2 の頃は基本的にコーチっていなかったよ。全部プレイヤー自身がやってた。


Deficio あの頃はプレイヤーの「エゴ」がすごく大きくて。大物プレイヤーがいて、そこに新メンバーが入ってきて、ゲームについて議論しても議論にならなかったんだよね。大物プレイヤーの言うとおりにするのがそこのやり方、ってなってたから。

 

Krepo あの頃は言い争いになっても解決手段がなかった。プレイヤー全員が議論の当事者だったんだからそりゃそうだよね。中立の視点でチームを見る人がいなかった。そのせいで、結構なチームが空中分解してしまったと思う。そして分解しなかった一部のチームは良いチームになってた。Season 3 の始めくらいになっても、まだコーチってほぼ存在しなかった。当時は必要をあまり感じなかったんだね。求められていたのはゲームプレイに関するコーチで、チャレンジャーチームのメンバーがコーチとして認めるようなゲーム考察力やテクニックの理解度を持つ人材がまず存在しなかったから。

 

Deficio ただ Season 3 になると Riot と色んな書類を交わす必要が出てきた。自分はそんな面倒な事やりたくなかったし、それは Bjergsen も Krepo も同じだった。そこでマネージャーを探そうって事になったんだ。書類仕事をやってくれて、フライトの手配とかそういうこともやってくれる人をね。特に Season 3 の最初のスプリットくらいの時期には、ゲーミングハウスのないチームも多かったしね。そうしてマネージャーが入ってからしばらくすると、マネージャーが「なんとなく全体像が掴めてきたんだけど、君たち練習試合の後いつも言い争いをしてるよね。ああいう時は 5 分くらい休憩を取って、その後リプレイを見てみたらどうかな? 怒鳴り合うんじゃなくてさ」って言って。それが Copenhagen Wolves では上手くいったんだ。そこで、「こういう人、フルタイムで居てもらったらすごくいいんじゃないか」って話になった。

 

Krepo チームがゲーミングハウスを持つようになったのって、だいたい Season 3 の初期からサマースプリットの終わりにかけてだったと思うんだけど、当時はその場しのぎ的な処置だった。アレで結構問題起きたんだよね。5 人の選手をそれぞれに管理するよりも、一箇所に集まって毎日顔合わせようって考えだったんだけど、身の回りの世話は全部自分たちでやるし、適切な監督者もいなかった。あの時期に、アナリストやコーチが必要だってことが分かった気がする。あと、ゲーミングハウスみたいに外部からの影響を遮断した環境だと、運動習慣や食事がひどいことになりがちだったね。

 

Deficio 5 人がひとつ屋根の下で暮らしてて、練習試合で負けたりすると、雰囲気最悪だったんだよね。みんなイライラして、話にまとまりもなくなる。そんな時、外部から「ちょっと落ち着いて、君ら見当違いのことで揉めてるよ、君らが負けたポイントはこことあそこだよ、特にあの Baron コールはまずかった」って言われればよかったのかもしれないけど、現実は「あの Pick & Ban はないわ」「お前のせいだろ」「いやお前が...」「てかレーン戦でキル取られてるし」とかってなって、結局「もういいや次の試合しようや」ってなってしまってた。それじゃ進歩しようがないよね。練習試合のために練習試合しているようなものだから。このサイクルにハマって、ずっと同じこと繰り返してるだけで上達しなかったチームは多かったと思う。「このやり方は間違ってるよ」って言ってくれる人がいなかったんだ。

 

Krepo そういう時期に、過去名プレイヤーとして活躍した人、つまりゲームについて深い理解がある人、が一部のチームに力を貸すようになってきた。


Deficio Moscow Five は、きちんとしたマネージャーを置いて管理を始めたチームの先駆けだったと思う。あれが後にコーチになるポジションの原型みたいになってると思う。

 

Krepo 彼はマネージャーとしてきちんと敬意を集めてたよね。彼が Moscow Five を率いているんだ、って感じで。

 

Deficio アナリストを最初に入れたのは Lemondogs だったかな。2 人いたんだけど 1 人は名前が思い出せないや。もう 1 人が Clement Chu 氏で、話をしてスグに来てもらうことにした。で、彼は着任してすぐにレポートを用意してくれたんだ。「こっちが LPL のデータ。こっちが LCK の Pick & Ban。君らの Pick & Ban は酷い。韓国の Pick レートはこうなってて、理由はこう。」選手側は動画を見る必要もなくって、ただ彼がまとめたメモを見ればよかった。で、それを読んで「ああ、自分らずいぶんたくさん間違いを犯してるわ」って気づいたんだ。視野狭窄を起こしてて、2、3 のチャンピオンをピックすることにこだわってた。そこからだね。他の人にもそのレポートを見せたりして、アナリストの評価が上がったと思う。

 

Krepo あれは転機だったよね。一緒にリプレイを見てて「ほらココ、なんで○○しなかったの? これこれこういう理由で、こうすることもできただろうに」って言ってくれるとか。そこで、ああそうか、って実例を伴って理解が進む瞬間があったりとか。

 

Deficio Kiedyś Miałem Team のコーチで数々の名選手を育てた Veggie 氏はすごく頭の切れるコーチだったと思う。彼は「韓国でやってることは、自分たちも試してみるべき」っていうアプローチを最初に試したコーチだった。その手法は Season 4 くらいで他の多くのチームも採用したっけ。彼は韓国で起きてることを分析して、選手にリプレイを見せたりしてくれて、その成果はすぐに現れた。そうすると他のチームも、「ウチもああいう人欲しい」ってなっていった。そうして、チームにコーチを置くことが普通になっていったんだ。

 

Krepo 長年独力でやってきたプレイヤーにはなかなか受け入れがたいところもあるとは思うけど、コーチはチームの選手にとって有益なんだよね。どう有益か? はチームごとに異なるとは思うけれど。ただ「サポートチーム」は「選手」にとって有益でなくちゃいけないよね。

 

Deficio Diamondprox みたいな歴戦の名選手でも、今やコーチの重要性を認めてるよね。

 

Krepo 時間はかかったみたいだけどね。

 

Deficio うん、時間はかかった。でもコーチの Sean はもともと名ジャングラーで同じロールをプレイしていたから、学べることも多かったんじゃないかな。そんなわけでベテランプレイヤーでも価値を認めてきているから、新しいプレイヤーは「コーチとか無意味だよ」とはもう言えないよね。だって他の全員が、「コーチは有益」だって思ってるんだから。

 

Deficio おそらくコーチ関連の次の進化は、Esports の外から人材を引き入れることから始まると思う。そういう人材はゲームプレイについてチームに付加価値を与えることはできないけど、他にアナリストを置いてそれに対応するようになるんじゃないかな。スポーツのマネージメントやコーチングの技術があり、なおかつ League Of Legends のゲーム理解も完ぺきな人材はいないし。

 

Krepo バランスの問題にはなるよね。LoL プレイヤーとしての知識と、従来のスポーツに関する知識の。そういう人が 1 人いればいいけど、チームで実現することも可能だから。

 

Deficio コーチの仕事はゲーム内容について指示を出せること以上のものなんだよね。チームメイトとしてどう行動するのか? フィードバックの出し方、受け取り方。日々を正しく暮らす方法。だからマネージャーが必要で、コーチが必要で、チーフアナリストが必要で、ってなっていく。League Of Legends はとても底の深いゲームだから。フリーランス含め、複数のアナリストに情報をまとめてもらって、コーチがそれをフィルタリングして、選手に渡す。そういう構造ができることで、優れた情報が選手のもとに入ってくるようになるんだ。

 

ーーー

以上、北米サーバーから日本サーバーにアカウント移動した LYEn00b 改め LYE がお送りしました! ご意見などはこちらのコメント欄か twitter: @lye_ までよろしくです。