LYE の League of Legends メモ

League of Legends プロリーグ LCS の解説を翻訳したり、同作や MOBA ジャンルで使われる英語を説明したりする予定。

Deficio氏とYamatoCannon氏が語るEUのスクリム文化と将来 (あとタンクメタ)

 

僕はEU LCSの試合後にアナリストとゲストがダベるコーナーが好きなのですが、今回は僕の好きなDeficio氏とYamatoCannon氏(Vitalityコーチ、元Splyceコーチ)が面白いこと話してたので紹介します。

(動画ではこのあたりから)

てかEUでもこんな風なのか…やっぱマネー is パワーなんだなあ…

では、どうぞ。

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Q:そういえばDeficio、EUのScrim文化にちょっと言いたいことがあるとか?

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Deficio 昨日アナリストデスクにAlphariとMaxloreが来たとき言ってたんですが、2017年にもなって、Scrim始まって10分でff入ったりすると。最後までプレイするのが稀だと。時にはScrimがドタキャンされることもある。YamatoCannon、コーチ的には言いたいこともあるんじゃないですか?

というのもここまでシーンが成熟しているのだから、毎日6時間は集中してプレイするというのは選手に求められて然るべきでしょう。なぜ未だにこんな問題が起きているのか。

YamatoCannon どうなんでしょう。僕のところでは一定の基準を設けて、それに沿って動くようにしています。たとえば自軍エリスとレネクトンがタワーダイブでダブルキル食らって、取り返すためにもう一度突っ込んで再びダブルキル食らったら、事実上勝敗は決まりですよね。そういうときは、こちらからff入れるのではなく、相手に「もう投了でいいですか?それとも最後までやりますか?」と聞くとか。そういうフローをしっかり作ってますね。

Scrimのキャンセルについては相手次第というのが本当のところでしょう。「Scrimヒエラルキー」みたいなのがあるわけです。強いチームほど相手を選べますからね。僕にしても、AティアのScrim相手は下位チームよりも重視します。そのほうが成果が高いのだから仕方ない。たとえばですけどG2が10分遅刻してごめんねーと言われたら、大丈夫ですよーというしかない(笑)。そういうものですよね。

なるほど。Scrim相手に困ったりということはあるんですか? 相手としてレベルが低すぎるとか…もちろん名前を挙げる必要はないですが、そうですね…欠かすことなくScrimを続けられる「強い」対戦相手が、EUに足りているんですか?

YamatoCannon そりゃあ好みというのもありますが、僕らは4位のチームだし、贅沢は言えません。あるもので最善を尽くす。そしてキャンセルの理由も、仕方ない場合だってある。選手が階段から落ちて踵を骨折したとかね。自分のチームでも実際にそういう事態はありましたから、それは仕方ない。そして…やっちゃいけないことだと思うのですが、嘘をつく人たちもいるんですよね。「ごめん、うちの選手がコケて足折ったからキャンセルで」って言われたのに、その怪我した選手がそこらへんをアイスキャンデー食べながら歩いてたりとか(苦笑)。

Deficio 回復速いですねえ。で、EUのScrim文化は十分なレベルだと思いますか? 地域として成長していく上で。それとも、この文化が成長を阻害していると?

YamatoCannon それは自分が何を目指しているかによるんですよ。たとえば僕は、一部のコーチとはオープンに「このScrimでやりたいこと」を話します。今回ウチはこういうことを狙ってやるけれど、いいかな?と。それで先方が困る、ということであればそれを聞く。僕らが当事者中の当事者なんですから、文句を言っていても何も良くならない。結局、自分たちは自分たちのScrimに対して影響力を持っているんだから、そこからやっていかないと。

Deficio 僕がこの件に強くこだわるのは…Season 3の頃、僕やYamatoが現役でプレイしていた頃から、Scrimについてはおんなじ問題があったからなんですよ。遅刻、キャンセル、早期ff、すぐティルトする。あの頃、もっとプロフェッショナルな環境があればなって思ったからなんですよ。当時はコーチすらいなかったです(よくわからん人がひとりいただけ)。だから今ならできると思うんですよ。たとえば、Vitalityなら「今4位だけど、ここから何ができるだろう? 次のScrimで何を試すべきだろう?」って真剣に話すべきだと思うんですよ。別にVitalityに苦言を呈しているわけじゃくて単なる例だけど。

そりゃあずっとモチベーションを保つのは大変ですよ。でもそういうひたむきな姿勢というのは、プロに求められるものじゃないですか? LCKのプレイヤーは、いつだってScrimから余すことなく学んでいる。他のどの地域よりもね。

個人的に、従来のスポーツ、たとえばフットボールとかと比較してなんでeSportsプロはそういうことができないんだろう?って疑問に思うんですが。

YamatoCannon たとえばEcho Foxは姉妹チームを持ってて、そのチーム間でScrimしてたりします。それだと、特定の目的に絞ったトレーニングができる。全く他人のチームとでは、相手のこともありそうはできませんからね。だからこれは僕の夢ですけれど…五年後くらいには10人以上が固定でScrimできたりするといいなと。そうすれば、特定の目的に絞ったトレーニングが行えて有益だと思うんです。ただのScrimだと同じことの繰り返しになりがちですからね。

Deficio 従来のスポーツとの大きな違いのひとつは、「スタメン争い」の有無でしょうね。NFLでもフットボールでも、若い頃から技術を磨いてきて、プロに入ってからも第一戦で戦い続けられるよう努力し続ける。そうしないと、自分の代わりが後ろにわんさかいるわけですから。でもLoLでは…特に現在のEUでは、控えを抱えているチームはとても少ない。だから現実的には、選手には練習で全力を尽くし続けさせるプレッシャーがかかってないんです。だって今YamatoCannonが「お前クビにして、ソロキューから代わり見つけてくるよ?」と言うことはまずないですよね。そして仮に言ったとしても、実際に降板させられるまでには時間がかかる。だから10人ロースターってのはいいですね。「お前真面目にやらないんだったら、次回から3試合こいつミッドのスタメンにするから」って言ってスタメン争いが生じるようになれば、誰もがもっと真剣に練習に取り組むようになる。それがもしかしたら必要なのかも。「スタメン落ち」というプレッシャーが。

YamatoCannon 恐怖というのは動機付けとしてとても強いものです。そして自分の後ろに何人も控えていると感じるのは、自分が与えられたチャンスをしっかり噛みしめる意味でもいいことかもしれません。SKTと同じです。あのチームでは、具体的に何かは想像しかできませんが何かしらの要因でスタメンが入れ替わるわけです。以後3週間、君は補欠だ、現時点では彼のほうが上だからね、と。

Deficio そうそう。だから控えとしてソロキューからプレイヤーを引っ張ってきて揃えておくとかね。あとSKTはトレーニングラインアップがいるでしょう。Huniが「発見」されたのもそこでした。Huniはあそこで、すべての練習に全力で取り組んで実力を示そうとした。いつかSKTがそれを認めてスタメン起用することを願ってね。残念ながらそうはならず、代わりにFnaticが引き抜いたわけだけど。だから、変な言い方になるけど、本気で取り組んで、全力で勝ちと上達を目指し続ければ、それが結実する可能性は高くなり、スタメンに近づくんですよ。だから個人的にはEUはもっとプロ志望人口が増えるべきなんだと思います。NAは今着手してますよね。控えを増やしたり。あれは長期的にはとても有益な結果をもたらすかもしれない。

ではEUの次のステップは何になるんでしょう? チーム構造? 資金?

Deficio 資金でしょうね。そしてロースター増員。

じゃあYamatoCannon、今もしお金が無尽蔵にあったら、ソロキュー・CSからあの5人を引っ張ってくるって人はいますか? そしたら10人で有意義なScrimができる?

YamatoCannon 人の目星はつきます。でも人を入れるのは簡単じゃない。性格の点もあるし、ソロキューだけだと競技シーンでは未経験だったりするし。でもここからヨーロッパを強くしていくのなら、より確固たる強さを目指していくのなら、「競争」は必然でしょう。北米に目を向ければ、大学でいろんな動きがありますよね。大学間での試合を通じて露出が増えて、そこから拾われる選手が出てきたり。確かP1のZigはそうやって出てきたはず。だから競争が必要です。従来のスポーツと同じです。フットボールでもユースリーグとか大学リーグから選手を引っ張ることがありますよね。

Deficio 国別のリーグはLCS登用に耐えうるレベルになってると思いますか?

YamatoCannon もちろん。Giantsなんかはスペインリーグで活躍した選手が何人もいますよね。繰り返しになりますが、競争がしっかり起こっていけば、優れた原石が発掘される確度も高くなっていきます。

Deficio もちろん資金も大事ですけどね。一部のチームは10人と契約することが経営的に無理だったりしますからね。ゲーミングハウスも大きくしなくちゃいけないし人も足りない。でも、もし資金があればスタッフも増やせるし、10人で競争のなかきっちりScrimできるとしたら、やっぱりみんなやると思うんですよ。だからチームの向上につながるとわかっていても、先立つものがないとね。

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以上でっす。

どんどん「プロスポーツ」として成熟していく一方で、資金とのバランスという問題も出てくる。お金はシーンの盛り上がりがないと湧いてこないが、盛り上がるには実力がいる。鶏が先か卵が先かってのが一見華やかに見えるEUでもまだまだ根深いというのが驚きでした。

あと、面白かったのでオマケ。UOLはプレイオフ、そしてその先を見据えてドラフトしているのだ(震え声)

おまけ:タンクメタとEUのチーム構成について

Deficio まだ各チームカウンターピックを見つけてないので難しところもあるけれど、Early game comp (序盤に強いスノーボール型構成)、たとえばエリスとかレネクトンは「対面に来たチョ=ガスを腐らせる」ことができればいい対策だと思う。ただ問題は、この構成だと中盤~終盤をほぼ完ぺきにこなして、タンクに仕事をさせないで勝ち切らなければいけないところ。なんと言っても、タンク相手に終盤の集団戦で勝たなくてはいけないんですからね。

今言えるのは、ほとんどの西洋チーム(ここではEUとNA)はExecution(作戦遂行)精度が足りないだろうということ。だからこそ、皆集団戦特化型に収束して、「どちらが集団戦強いか」の勝負に持ち込んでいる。そのほうがリスクを抑えられますからね。

YamatoCannon それからタンクがパワースパイクを迎えるのはだいたいバロンが出現する時間帯なんですよね。出現より早い場合もありますが、だいたい20~25分時点で一番強い。ADCがアイテム3つ揃えてタンクを溶かし始める前の時間帯。4つ目にラストウィスパー積まれる前。だからこそ、最初のバロンを先に取ったチームが勝つ確率が高いわけで。

今日の試合でもコグ=マウがピックされてましたが(FNC vs UOL 第3試合、UOLがピックして敗北)、あれもいい策だと思います。遠くから火力を出せる。でも味方がレネクトン、タロン、セジュアニじゃ誰も守ってくれないですよね。

Deficio あれは実にLPLって感じでしたね。3人がスノーボール狙い、コグ=マウはひたすらファーム。でもまさにそういうことなんですよ。Executionが非常に難しい。UOLは特に、序盤が苦手なチームですからね。

今後はタンク対策ということでトランドルサポートが戻ってくる可能性もあります。氷柱がビジョンを取れなくなったのはサポートとしては痛いNerfでしたが、それでもULTは強いですから。それからケイン。タンク変身してブラッククリーバー積んで、といけばULTの性能もあってタンク相手に有利にいけると思います。ただいずれにしてもやはりExecutionが難しい。しかも、それをScrimじゃなくステージ上でやらなくちゃいけないんですからね。

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